Web制作業界の話をダラダラと書いてみました。
この業界にはHTMLコーダー、もしくはマークアップエンジニア、フロントエンドエンジニアといった呼び名の業種があります。
コーダーとマークアップエンジニアは違う、という方もいるでしょうけど、どちらを名乗ってもいいというぐらい、かなり曖昧なはずです。
で、この投稿は、コーダーとかマークアップエンジニアってどうよ、と考えている人の目に留まればいいなと思って書いています。
私自身は一応基本的なコーディングはできますが、お願いするほうです。
さて、その職種を大雑把に言えば、Webの設計者が意図した動作や、WebデザイナーがPhotoshopで作ったPSDファイルをもとに、HTMLやスタイルシート(CSSファイル)の作成や、Javascriptを実装したりの業務を受け持ってくれる人ですが、実はあまりに領域が広く、かつ専門性が高いため、その全領域のスキルをフルにカバーしている人は多くありません。
ただ、このコーディングという領域の専門性は、ここ10年ほどで急激に高まってきたものと言えます。
それ以前、おおむね2005年頃までは、WebページはTABLEコーディングの時代でした。
TABLEコーディングはレイアウトを枠組みで組んでいく作業だったため、あまり専門のスキルとして認識も乏しかったように記憶しています。
Webページをデザインする「Webデザイナー」でさえ明確に確立していなかったこともあり、デザインしながらコーディングも兼任していたり、単純にHTMLに詳しいスタッフが作業していたような時代でしたから、専業者も少なく、まだエンジニアと呼べるほどの専門性はなかったと言えます。
それがW3Cの勧告(構造とデザインの分離)や、それを支持するGoogleの出現とSEO対策の知識が求められ、スタイルシートの導入(HTMLとCSSの分離)あたりからコーディングという職種が認知されはじめたように思います。
その後もJavascriptの高度化、さらにデバイスの多様化、HTML5、レスポンシブ、フレームワークと怒涛のように知識領域が広がり専門性が高まっていきました。
かつそれらの技術は流動、淘汰、出現、更新を繰り返しているため、常に新しい情報を習得し続けなければなければならない業種となってしまいました。
「常に学習するのはどの職種も同じ」と言われそうですが、ここで言う学習とは、自身の判断力とか経験値を積む研鑽という意味ではなく、覚えても覚えても次々に出現・変化する技術、情報、知識の習得のことです。
ある意味、「めんどくさい」と萎えるような職種ですが、逆にいえば発展し担当領域を広げ続けている職種とも言えます。
ただ、それら(広がった領域)はすべてベースにHTMLコーディングの経験(または知識)がないと成り立たず、その経験を経てスクリプト書きや実装専業になった人がいたとしても、一定期間情報収集をサボれば、通り過ぎたはずのコーディング技術自体に遅れをとってしまうことも不思議ではありません。
まあ、全部現役でありたいと思うと、あっちもこっちも押さえなくちゃって感じで、もぐら叩きみたいなものです。
そういった流れを見ると、昔、WebデザイナーがHTMLコーディングも当たり前にしていた時代から、デザインとコーディングが分業化したように、コーディングそのものもHTMLコーディングと、JavascriptやAPIの実装をする担当といったさらなる分業化が進むと思います。
縦割りの分業だけでなく、得意・不得意というかWordpressはやるけどMT(ムーバブルタイプ)はやらないといった横方向の特化もあるでしょう。
バックエンドのプログラマーさんだって、Javaがメインとか、PHPが得意とか、Railsを始めたとかと似たような話です。
そういった領域内でのポジションを選択して深めてもらう段階になっているように感じますし、それが今後ますます顕著になってゆくように思います。
現場に理解の乏しい経営者側からは「よくわからないけどそれらはコーダーさんが全部覚えて一人前でしょ」と片づけられてしまいがちです。
マークアップ中心のコーダーさんも「コーディングだけではなくJavascriptもなんとかしなくちゃ、フレームワークも触らなきゃ」って、みんながみんな「なんでもできるように」「できなきゃ一人前じゃない」を目指し過ぎな感もあります。
しかし、そろそろ「なんでもできます」を目指すのではなく、自分の好きなほう、得意なほうに特化、深堀りしてもいい時代でしょう。
スクリプトが好きならそっちを得意になるとか、HTML5を極めていくとか。
なぜなら、それでも通用するし、食いっぱぐれしないぐらい人材不足だし、全部やろうとすれば浅くなってしまうから。
収入面でステップアップするためにとか、フリーランスで食えるためにという意味では領域内で抜けがないほうがいいのでしょうが、この領域だけ得意であとはボチボチといったスキルでも、得意領域が錆びつかない努力をしていればOKかと思います。
しかし、なぜここまで人材不足になったんでしょう。
そもそも2年制の専門学校ではWebデザイナーさんの学科はあるものの、基礎知識程度でしかマークアップを学ばないし、この職種に特化した短期の講座を離職中に受講して会社に入ってから本格的に覚えたり、会社内で職種替えした方が多いようです。
要するに、既存の社会人の転職や職種替えであって、新卒という人材供給がなさ過ぎ。
かといって完全素人の学卒を大量に雇用し、ゼロからSE教育をするシステム業界のようなことはできません。
なぜ?制作会社(業界)は企業規模的に小さく、ゼロから教育する余裕も独自の研修プログラムもないから。
その点においては「新卒という人材供給がなさ過ぎ」だけが原因ではありません。
制作会社もつい、即戦力でなくても、準即戦力、妥協しても基本的な学習は済んでいる人を欲しがるのが現実です。
知り合いの現役のコーダーさんに聞くと、学習したのは社会人になってからという人ばかりでした。
デザイナーやデザイナーの卵からの転身や、Webの運営者だった方や元グラフィックのMACオペレータ、元SEといった方、転職時にコーディングの講習を受けて派遣で経験を積んだ方など。
そういった職種替えの方がほとんどでした。
学生時代にWebデザイナーになりたいと思った方は多いでしょうが「コーダー(マークアップエンジニア、フロントエンドエンジニア)を目指した」という方はほとんどいないはず。
それだけ歴史が浅いというか、近年確立してきた職種と言えます。
やはり学生さんからすればWebデザイナーという言葉を知っていてもHTMLコーダー、マークアップエンジニアという職種を知らないとか、知っていてもデザイナーの指示どおりファイルを作成するオペレータさん程度しか理解していない方がほとんどじゃないでしょうか。
さらにマイナスな面として、実際の現場においても最終工程を受け持つが故に、曖昧な設計や曖昧なデザインの尻ぬぐいがあったり、タイプミスがあれば「誰がコーディングしたんだ?」みたいな立場に置かれたり、動作不良のために延々と調査・改修に追われたり。
もし「いいねえ」と褒められるのはWebディレクタさんやデザイナーだけとか。
萎えることを書きましたが、Web制作の影となり日陰となって(ずっと影で)いる面もあります。
だけど、缶コーヒーのジョージアのTVCF「ちょっとおじさん!どいてよ。」「見えない~」の電気設備技師さん編のコマーシャルだって言ってます。
「Webも誰かの仕事でできている。」
HTML5もjQueryもAPIも、CMSも、主たるフレームワークの導入も、ぜーんぶOKな人は(たぶん)いません。
まあ天才プログラマーさんがいるぐらいだから、どこかに天才フロントエンドエンジニアもいるんでしょうけど、業界はそんな天才だけじゃ全然回らないわけです。
人材不足が常態化している今、なんでもできる人を雇うのは至難の業。
なんでもできますの人でなくても得意分野がある人、得意にしようと方向性をもった人がチャレンジしてくれたらいいと切に思います。
とりとめもなく、だらだら書いてしまいましたが・・。
Webのクリエイターを目指す学生さんは多いですが、ぜひ業界にとって不可欠なWebのエンジニアも目指してほしいものです。