ブリタニカ商法。そもそも売る側はプロであり、客は素人です。(具体例あり)

(2013.04.19追記)
2008年に書いたこの記事に最近またアクセスが増えています。

たぶん、4/19(2013年)の「消費者裁判手続き特例法案」が閣議決定というニュースに関連しているのかな?と思います。

この法案は、訴訟費用の問題で泣き寝入りする悪徳商法の被害者を救済する目的で、被害者に代わって国が認定した消費者団体が訴訟を起こせる制度とのことです。

私のブログ記事自体は「ブリタニカ商法」の、人の心理を非常に考慮した話術(セールストーク)について書いたもので、ブリタニカ商法イコール悪徳商法であるというテーマの話ではありません。

ただ、相手は1枚も2枚もうわ手ですよ、という意味で書いたものですので、ご興味があれば読み進んでください。

「やはり『現金代わり』は危険、若者のクレジット契約で多額の借金も」・・・というニュースがBusiness Media 誠にありました。(掲載期限切れのためリンクは削除)

このニュースは若者がクレジットを安易に使うという視点かも知れません。

しかし、こと悪徳セールスであれば、クレジット払いに追い込まれた、というのが現実ではないでしょうか。

最後は「お金がない」という断り文句があるから大丈夫・・と心細いながらもセールスの相手をしている時点で、すでに半分ハメられているのです。

なぜなら、セールスは計略でわざと「お金」だけが問題だというところに客を追い詰めているからです。

つまり、「お金がない」=お金さえ問題なければ買わざるを得ない、という状況です。

どういう方法で?

古くは1970年代のブリタニカ商法(セールストークの手法)です。

当時、精神論や根性論のように語られていた「営業は断られてから始まる」といった考えを真っ向から否定したもので、いまでも充分通用する話法かと思います。

そのロールプレイというかセールス話法を書いておきます。

  • 会った瞬間から客がNOと言えない会話を重ねます。

    「○○さん、今日は暑いですね」
    「○○さん、このあたりはおしゃれな街ですね」
    「○○さん、お忙しそうですね」
    など、なんでもいいのです。
    そうやってリズム良く客のYesをとってゆき、出来る限り名前を呼び、客との関係を作ってゆきます。

    それをラポール (rapport)をとる、と言います。

    ラポールとは臨床心理学の用語で、詳しくはWikipediaとかにも書いてありますが、心理的的に自分と相手との信頼関係が作られた状態を指します。

  • お金以外の断り文句を想定して、それを言われる前に、その他の断り文句をすべて潰してゆきます。

    「やる気が無い」「必要ない」
    といった想定できるネガティブを先回りして言わせないようにするわけです。

    例えば英会話であれば、国際社会をあらわすデータやグラフを見せて
    「そういう時代ですよね?」
    「そうですね」
    と客のYesを取ったり、
    「しゃべれないより喋れたほうがカッコいいですよね、○○さん?」
    「はい」
    とか。

    「時間がない」「忙しい」といった言い訳も出ないように先回りして
    「この先、ご自身の能力はこのままでいいという方にはお勧めしません」
    「このメソッドは1日たった15分です。15分なら、○○さん、自分のためのお時間、作れますね?」
    「まあ・・なんとか」

    時には客に言われる前にセールス側から
    「○○さん、いま仕事で英語は直接必要ないですよね?」
    と否定してあげても有効で、「はい」と答えられてもYesは取れますし、「いいえ、少しは必要なんですけど・・」と答えられても、それはポジティブなNoになります。

    これをかなりシツコク繰り返します。

    要は客が「いいえ」「違います」を言わせない質問を繰り返し、「はい」「そうですね」を言い続ける状態を作るのです。

    もちろん必要ないとかやる気が無いとかの断りも言われる前に先回りして潰すトークの小技は沢山用意されています。

  • まだ価格の説明をしないまま、申込み(購入)を迫る。

    ここからが、クロージングです。
    「では○○さん、ぜひこの機会に、この場で、お申込みください」
    すると客は、ほぼ100%、買わされる危険(笑)を察して
    「あのう・・料金は?」
    と尋ねてきます。

    客も最後は「お金がない」という断り文句が控えているので、まだ無防備です。

    しかし、これはセールスの計画通り、スジ書通りなわけです。

    「あなたは(英会話教材であれば)英語は今の仕事に必要ないかも知れないけれど、喋れたら素晴らしいと仰ってましたよね。」
    「ええ、はい」
    実は「喋れたら素晴らしいですよね?」という誘導に単にYESと答えただけなのに
    「喋れたら素晴らしいと思います」
    と積極的に言ったことになっているかも知れません。

    「それに、1日15分なら、いくらお忙しい○○さんにも、時間作れると仰っていましたしね。」

    「では、ちょっと確認ですが、お金のことは置いといて、この商品(サービス)は大変良いものだとご理解いただけましたか?」
    「はい」
    「問題は、お金だけですね」
    「は、はい」
    こんな調子です。

    「問題はお金だけ」にYesと言ってしまうと、いまさら「やる気がない」「必要ない」とは言えなくなってしまいます。

    心理的に人は自己矛盾を避けようとします。

    自分がYesと言ったことをあとでNoと言い直せないのです。

  • まずは少額でYESを取る。

    セールス「では言います。○○さん、1日たった300円です」
    金額(総額)が知りたいのに「はあ?」って感じですが(笑)

    「○○さん、1日300円。ちょっと缶コーヒーとか我慢して、タバコの本数減らして300円、大切な自分に投資できますか?」

    そんな感じです。1日300円に「まあなんとか・・」とか「はい」とか、客は生返事をしてしまうでしょう。

    「では安心してお申込みください」
    「だ、だから300円はわかったから、総額いくらなの?」
    「○○さん、1日300円は大丈夫ですね?」
    「はい」
    今度は生返事ではなく、「はい」と言ってしまうことでしょう。

  • 「いくらと思いますか」と逆質問。

    こんな機能があって、あのサービスがついて、あんなこともできて・・と内容を思い出させ、高そうに膨らましてゆきます。

    客は「わかりません」とか「○○万円?」とか言うでしょう。

    セールスは客の言った金額に、トンデモナイといった顔をして、例えば70万ぐらいの商品なら「197万円です!」とか、わざと数倍の料金を言って驚かせ、その理由を述べるでしょう。

    項目と金額が書かれた計算式の書類とかを見せ、合計197万とか書かれていて、
    「なぜ197万円の価値があるのか、子どもじみた計算式ですが、当然○○さんもご理解いただけますよね?」
    「は、はあ・・高いんですねえ・・」
    いつの間にか価格ではなく、価値と言い換えられています。

    客「でも197万円なんて大金はちょっと・・」
    セールス「197万円の価値といったまでです。1日300円はOKとおっしゃっていただいた○○さんなら大丈夫」といって丸め込みに入ります。

  • 高い価値と思わせ、金額を一騎に落とす。

    まあ深夜の通販テレビと同じです。
    というか、深夜の通販テレビがブリタニカを真似ているだけですが。

    「○○さんには本日のみのご案内で、私の事業部でライセンス提供が許された53名様に限り、70万円でご提供しています」

    1日300円、1ヶ月で約1万円、クレジットを利用いただければ・・・と、いつの間にか細かな数字は切り上げられて70万円の支払いもOKだから、といったマヤカシでクロージングに持ち込まれるわけです。

    本日と限定感を出して言うのは「何日か考えます」という断り文句を潰すためですが、その断りに対する潰しのトークも用意されています。

    また数的な例を出す場合は必ず奇数で言います。奇数のほうが真実に聞こえるからです。

  • きっかけトークを炸裂させ、黙りのクロージングで即決を促す。

    「○○さんこの出会いを生かして(きっかけとして)どうぞ」
    あとは5分でも10分でも黙り込みます。これを黙りのクロージングと言います。

    すでに考えられる断り文句をすべて潰されています。Yesどりをされ、いまさら必要ないとも支払えないとも言えないため重苦しい空気が流れます。

    その空気を破る1つの道は「買う」ことになります。

    もちろん、躊躇して長引く場合がほとんどですが、セールスは全神経を集中して客の表情を読みます。

    客はセールスによってやる気を起こされ、英語を学びたいという気持ちにもなっています。あとは決断だけ。

    セールスは、

    「いままでなにか新しいことを始めるには、なにかきっかけがなければできなかったはず」
    「明日になればきっとあなたはいつもの通り、やらないはず」
    「私との出会いをきっかけにしてください」

    と畳みかけるように即決を求めてきます。

    客が即決を避けるようであれば、寒苦鳥というセールストークもあります。

    「**さん、寒苦鳥という鳥をご存知ですか?」

    そう言って、セールスは寒苦鳥の話をします。

    寒苦鳥の意味をコトバンクより引用しておきます。

    かんく‐ちょう〔‐テウ〕【寒苦鳥】
    インドのヒマラヤにすむという想像上の鳥。夜に雌は寒苦を嘆いて鳴き、雄は夜が明けたら巣を作ろうと鳴くが、太陽が出ると寒さを忘れて怠ける。仏教では、怠けて悟りの道を求めない人間にたとえる。かんくどり。

    「明日にはやろう、そのうち始めようって、結局、凍えて死んでしまうのです。」
    「・・・・」
    「**さん、寒苦鳥にならないようにしましょうね」
    そう言ったあと、沈黙のクロージングの時間が流れます。

どうですか?
もちろん、こんなセールストークで実際に購入してしまう方は10~20%だとは思います。

しかし、いかに客は無防備で、ブリタニカ商法のセールストークが手ごわいか、おわかりいただけたらうれしいです。

(追記)
ブリタニカ商法に少し関連して下記の記事を書きました。

ご興味があればどうぞ。

(参考)悪質(悪徳)とかグレーな商売と知らずに就職(転職)したら、の話。

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