癌患者と家族を惑わす民間療法を試した、むなしい思い出など。


2017年6月28日、11の医療機関に対し、厚労省が「無届けさい帯血投与に停止命令」を実施したとのプレス発表がありました。

再生医療等の安全性の確保等に関する法律に基づく緊急命令について(厚労省)

がん治療や美容の「アンチエイジング」などの名目で、他人のさい帯血を使った再生医療で義務付けられている届け出と審査会の確認を経ずに、治療を行い、患者から百数十万~数百万円を受け取っていたというものです。

緊急停止命令を受けた11の医療機関の中には、先般お亡くなりになった小林麻央さんが通院されていたと聞く「表参道首藤クリニック」が含まれています。

その表参道首藤クリニックは2017/8/9現在、下記のような簡素なホームページに代わっています。

どうしたのでしょうか?
さい帯血投与に停止命令が出ただけで、ほかの一般治療は停止していないはずですよね。

Internet Archive Wayback Machine で過去のホームページを見ると下記のような感じでした。

つい数か月前のホームページでは、自由診療の項目には下記のようなメニューが並んでいました。

小林麻央さんが受けたと話題の「水素温熱免疫療法」も並んでいます。

「水素温熱免疫療法」は厚労省が停止命令した「さい帯血投与」の治療とは関係ないはずですが、クリニックではかなりチカラを入れていたようで、マンガまで使ってアピールしていました。

自由診療費が高額なのは当然!と言わんばかりの医者の笑顔がムカつきます。

この「水素温熱免疫療法」は、体験者のブログ記事を数件検索で見ることができて、特にステマでもなさそうな記事も読んでみました。

下記は相澤由佳さんとおっしゃる方のブログですが、2014年12月28日(日)の記事

液体式ハイパーサーミア「水素温熱免疫療法」を始めました!
今月から重水素減少水のモニターを始めるに合わせて、表参道首藤クリニックの首藤先生のおススメもあり、液体式ハイパーサーミア「水素温熱免疫療法」を
始める事になりました。

この方は癌の治療の記録を何度も記事にして書かれており、6回は水素温熱免疫療法を受けたようです。

2度目のがん 治療記録6
2015年1月19日
表参道首藤クリニックにて。
重水素減少水点滴:8回目
液体式ハイパーサーミア「水素温熱免疫療法」:6回目
水素吸入:6回目
局所高周波温熱療法:6回目
ワクチン注射:5回目
アルブミン点滴:1回目
(以下省略)

しかし、残念ながら上記のブログ記事を投稿された約3か月後の2015年04月12日にご逝去されておりました。

http://aizawa-fp.jugem.jp/?eid=1173
(抜粋)
残念ながら昨日、母が旅立ちました。
闘病中は多くの方々に支えていただいたことを 母はとても感謝していました。

ブログ主ご本人の文体は明るくポジティブでしたが、きっと、いや絶対に辛かったことでしょう。

ご冥福を心よりお祈りいたします。

お亡くなりになっておられる方の記事を引用するのはどうなのか、悩みましたが、読まれることを前提のブログと思い、使わせていただきました。

さて、このブログ主の方は、水素温熱免疫療法やそのほかの自由診療に対して、投稿を読む限りひとことも批判をされておりません。

この方に限らず、同様の治療を受けろれている癌患者さんにとっては当然ながら藁にもすがる思いで、高額な治療を受けているはずです。

自由診療や民間療法を続けている間、もし効果が見えなかったとしても、「この療法のおかげで延命できているのだ」と思うのかも知れません。

そういった意味で、自分が受けている自由診療や試している民間療法に批判的な記事を書くことは、ほぼないでしょう。

そして、結果として治癒できなかったとしたら・・・当然、(遺族が書かない限り)ブログにその結果を投稿することもできなくなるわけです。

この方の記事1つを例にして、「水素温熱免疫療法は効かない」とまでは断言できません。

しかし、自由診療や民間療法には、あまりにもいい加減なものが溢れかえっていると思います。

さて、超長い前置きでした。

ここから前置きより短い本題を書きます。

私の父は2001年2月にS字結腸癌で他界しました。

もう17回忌です。

その前の年、父は癌が発見され、肝臓に転移もあり、開腹手術をしましたが、人工肛門だけつけて癌は一切、切除しませんでした。

「余命はハッキリは言えませんが、数か月でしょう。特に治療計画はありませんが、痛みを感じたらモルヒネを投与します。」

そう医者に言われ、結果的には1年後に亡くなりました。

まあ、最後はモルヒネで寝かされ意識のないまま最期を遂げましたが、その1年間で私も色々調べました。

まさに(何度も書きますが)藁にもすがる気持ちです。

最初手にしたのは本屋で『水溶性キトサンでガンが消えた』(正確な書籍の名前は憶えていません)といった類の本を買いました。

都内の某医科大学の(韓国人だったか中国人だったかの)先生が監修しているとあり、本の最後のほうにあった販売会社に電話しました。

場所は池袋北口の雑居ビルの2階。

処方箋薬局のようなイメージで訪問した私は戸惑いました。

事務所はサプリメントを扱っているようには見えない単なる事務所で、延々と電話でだらしない感じで話をしている男性と、愛想のない事務員がいて、うさん臭さ100%でした。

その事務所で購入した水溶性キトサンは、わずか1ヵ月程度の量で10万円しました。

その事務所では2回買い、父に与えました。

しかし、サラリーマンの私が親のためとはいえ、そんな金が毎月続くわけがありません。

もっと効果のありそうなものはないか?

2000年の頃ですが、ネットで探しまくりました。

ある夜、アラビノキシランというサプリメントのようなもので、癌が消えたというホームページを読みました。

当時はまだブログというシステムが無かった頃で、アフィリエイトも草分けのバリューコマースが設立して間もない時代でしたから、アフィリエイターが提灯記事を書いているという認識はありませんでした。

そのホームページには、アラビノキシランを摂取した父親が、末期癌から生還したという体験記を数ページにわたって書かれていました。

しかし、アラビノキシランの購入先や商品名などは一切書かれていません。

「私の父が使ったアラビノキシランの製品を試したい方はメールをください。」

そんな一文が最後にありました。

私は父の年齢、癌の種類、末期であることなどを書いて、製品の購入先などを教えてほしいとメールをしました。

すると翌日か、翌々日かに、返信がありました。

私も心配している、きっと助かる、あきらめずにアラビノキシランで完治させましょう・・・といった言葉が並びますが、どう考えても数千字の長すぎる文章。

1行の文字数をきっちりハコ型に整えた長文。

私が「父が癌」と書いたにも拘わらず、メールには「私自身」が癌になっている文章で、単に定型文の数か所に私の苗字を差し替えているだけのテンプレート臭プンプンのメールでした。

定型文的な励ましのあと、
アラビノキシラン商品はこれ、と商品名とサイトが紹介されていました。

さらに、「●●社にて◇▽を注文してください。その際、『◇◇から紹介された』と必ず言ってください。」のような文章がありました。

そして商売柄、HTMLのソースを見て、(どのような記述があったか忘れてしまいましたが)フザケルナ!こいつも単なる商売か!と思ったことだけ記憶しています。

速攻でそのメールはゴミ箱に入れて消去しました。

次に、ネットで探したのが、有機ゲルマニウム。

これは商売っ気が全然感じられない人の記事でした。

淡々と、小田急線沿線にあった浅井ゲルマニウム研究所から買って、親に飲ませて症状が良くなったことや、薬事法違反のことが書かれていたと記憶しています。

薬事法違とは、当時の厚生省の発表によると

(株)浅井ゲルマニウム研究所の薬事法違反に係る告発及び製品の回収について
浅井ゲルマニウム研究所が治験薬を医師グループに提供し「寄付」の名目で対価を受け取っているのではないかという情報があり、(株)浅井ゲルマニウム研究所から事情聴取するとともに、平成8年12月20日及び25日に本社(東京都)、仮事務所(川崎市)、建設中の新工場(函館市)等に立ち入り調査を行った。
(以下省略)

無料であるべき治験薬を売ったということは、医師側にも試すだけの価値があったんじゃないのか?
競合する製薬会社が厚生省(当時)にチクったのか?

とも思いました。

それで、結局、北海道に移転した浅井ゲルマニウム研究所から商品を4~5回、合計で10万円ぐらいは買ったと思います。

浅井ゲルマニウム研究所に関しては、うさん臭い効能説明は一切しておらず、こちらが勝手に(癌に効くのでは?と)期待しただけで、当然騙された感もありません。

父も期待して毎日服用していましたが、残念ながら延命を含めて効果があったのかは不明です。

母は勝手に、父の数か月の命が1年になったのはゲルマニウムのおかげと思っているようでしたが、実際のところはいまだにわかりません。

唯一、癌ではなく、癌による腹水が溜まったとき、五苓散という利尿効果のある漢方薬が効果があったことがありました。

医者の利尿剤は効かず、腹水をせっせと抜いていたときに、私が用意した五苓散を5倍濃度で煎じて飲ませ、数週間の命が4か月ほど延命したことがありました。

そのとき参考にしたホームページが17年経っていまだに残っていました。

進行癌の腹水

上記の記事は、Googleの検索結果には、2001/02/01とあります。

地元の漢方薬局で五苓散を買い、5倍濃度で煎じて父に飲ませると、オシッコがじゃんじゃん出て腹水がへこんだことを思い出します。

いま思うと、自由診療や民間療法については聞いたことがある程度にしか知らなかったのが、いざ身内に末期癌患者を持って初めてそういった閉鎖的で独特な商売があることを知りました。

自由診療や民間の免疫療法のすべてを否定するつもりはありません。

民間療法ではないですが、医療用大麻などは、全否定せずにぜひ効能の有無を研究してほしいと思うぐらいです。

また、自由診療や民間の免疫療法で治癒した方が大勢いるなら、どうしてこのネット社会において「あのクリニックの治療で治癒した」「この方法で癌が消えた」という(ステマではない)体験記事が溢れていないのかという疑問もあります。

自由診療や民間の免疫療法を全否定はしたくないです。

しかし、現状を見ると、足を踏み入れると帰り道のない世界(マーケット)のような気がします。


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