日頃、Webサイトの制作プロデュースやWebの動的なシステムの設計などをやっているのですが、これはノーギャラでプライベートに頼まれた話です。
依頼者は医薬品小売販売業の卸の許可をとっている会社の役員で、飲み友達(以下「知人」とします)。
知人はアジア人バイヤー相手に化粧品やヘルスケア商品などの取引を担当しているようで、今回はその取引先で通販サイトを開きたいと頼まれたとのこと。
私はプロジェクトリーダーみたいな位置で、費用は直接払うから進めてほしいという感じでした。
依頼内容や要望を聞くと
- ・香港の会社(中小企業)があり、ECサイトを自社で始める予定
- ・英語、簡体字(中国)、繁体字(香港・台湾)、日本語でやりたい。
- ・対象は中国、香港、および中国、香港の日本人や欧米人。
- ・香港ドメイン。サーバは中国か香港か、東南アジアに置きたい。
- ・商品は湿布や医薬品、ヘルスケア商品などで、日本だと通販規制がある類。
- ・決済はクレジットカード、銀聯カード。
ええっ!?
サーバーは中国か香港?
めんどくさそう・・・。
取扱商品に医薬品があっても、経営する会社が香港なら、サーバーは日本でもいいんじゃないのかとも思いましたが、そのあたりの法律は詳しありません。
所在地が香港でも、日本にサーバがあって、日本国内で買えてしまうECはまずいのかも。
似たケースに「@通販」って医薬品の海外個人輸入代行業務というECサイトがあり、その会社の所在地は香港で、サーバは米国で、日本人相手のECです。
まあ、そんなわけでアタマも混乱するわけですが、サーバは(日本がNGなのは了解するとして)米国でもいいじゃん?と思ったのですが、中国市場をメインの対象にするので米国は避けたいとのことでした。
そのあたり、私は詳しくないのですが、中国という国は、国家的なファイヤーウォールがあるわけで、きちんとした理由も明らかにせず突然国外サーバー(特に米国)を遮断したりする、いわゆるチャイナリスクがある模様。
とにかく要件は「サーバは中国か香港か、東南アジアに置きたい」というので、サーバは、初めパル株式会社という香港サーバーレンタルをしている会社があって、そこでどうだろうか、と知人から連絡がありました。
しかしこれはスペックが低い共用サーバーで、しかも高いので早速却下。
次に、同じサーバ会社で中国・香港VPSというのがありました。
しかしメモリ4GB、2コア、SSDが40GBのタイプでさえ年額144,060円もします。
日本のVPS相場でいえば、そのスペックなら年額3万円~4万円でしょう。
それでもまあ今回は仕方ないかと思いましたが、スペックが不透明なのでお試し期間を交渉してくれと知人に頼んだら、「10日間ならいい」とサーバの営業スタッフに返事をもらったとのことでした。
しかし、知人が再度そのサーバ会社に連絡をすると、そのスタッフからの返事がなく音信不通になってしまったため、信用できなくなったから他をあたってほしいということになりました。
じゃあAWS(Amazon Web Services)のアジアのリージョンでいいじゃん、ということになり、知人にAWSのURLを教え、とりあえずアカウントだけ作ってもらいました。
そのアカウントを借りてログインして調べると、中国リージョンはEC2のスペックが他のリージョンの仕様と違うようで避けたほうがいいということがわかりました。
また、そもそも香港にはAWSのリージョンがなく、結局のところAWSのシンガポールリージョンのEC2を選択しました。
ここでいきなり「CS-CART」ですが、CS-CARTとは、多言語・多通貨に対応できるECサイトのCMSです。
私が以前、越境ECに興味があったときに候補に挙がったECのCMSですが、これを「越境」というより海外拠点のECに使おうと考えました。
CS-Cartは標準で25言語に対応。
今話題の海外向けECの構築に最適です。
管理画面から任意の言語・通貨を追加できるため世界の様々なマーケットに対応したネットショップを構築・運営できます。
これは機能がいろいろ制限された無料版がありますが、まず無料版をダウンロードし、インストール後にCS-Cartスタンダード版ライセンス(99,800 円)を購入し、ライセンス番号をセットすることで全機能が使えるフルモードになります。
インストールする上でサーバー要件はこちらのCS-CARTのインストールマニュアルを参照してください。
なお、多言語で25言語とはいえ繁体字は無かったですが、繁体字プラグインが1080円で販売されていました。
CS-Cartの他にもCMSで候補がなかったかと言うと、オープンソース(無料)のEC-CUBEなどもあります。
しかしEC-CUBEを多言語化するとなると、いきなり高額なプラグイン(324,000円)が必要になります。
それに比べれば、結果的にCS-Cartのスタンダード版ライセンス(99,800 円)を購入したほうがコストを抑えられると考えた次第です。
サーバをどうするか、と試行錯誤している最中に、知人が手をまわして香港ドメイン(.com.hk)をインターリンクのGONBEIドメインで取得したとのことで、あっさり解決。
香港ドメイン(.com.hk)はGONBEIの料金表で見ると、年間17,280円とのこと。
意外に高いものです。
GONBEIドメインの管理画面にアカウントを借りてログインし、ネームサーバをAWSに向けてもらいました。
これでドメインは完了です。
また、サーバのほうもドメインが設定されたのをうけ、SSLも無料のLet’s Encryptをセットしました。
中国の銀聯とか、香港、台湾など、日本国内以外での発行カードに対しては、国内の決済代行会社は殆ど全滅で、あってもベースとなる費用が高いという面があります。
そこで真っ先に頭に浮かぶのが、Paypalですが、基本的に下記の決済があります。
・ウェブペイメントスタンダード
・エクスプレスチェックアウト
ここで注意したいのは、下記のPaypalの発言です。
PayPalのウェブサイトペイメントスタンダードまたはエクスプレスチェックアウトを利用している場合、PayPalの仕様としては、必ずゲストチェックアウト(PayPalアカウントなしにクレジットカード決済)できることではございません。
直接クリジットカードで支払うできるかどうかはPayPalサーバーから判定されます。
その決済にリスクがあると判断されたら、詐欺などを防ぐために、強制的アカウント作成が要求される場合があります。
それを避けるためには、有料のウェブペイメントプラスを使えるようにならないといけません。
そのことについては以前記事にしました。
ペイパルのメール決済は、ウェブペイメントプラス(月額3,000円)がないと使いものにならない詐欺的な話。
知人には、香港の会社にペイパルのビジネスアカウントを取得しておくように言ってありました。
その香港の会社のアカウントでペイパルにログインすると、英語か中文(簡体字)しか選べず、ちょっと戸惑いました。
各種アカウントの登録は所有者に任せるとして、私がやるべきはエクスプレスチェックアウトのための情報を得ることです。
ログインすると、Profile > Business set-up と進みます。
すると「How would you like to set up PayPal on your website?」というテキストが目に入ります。
そしてOption AとOption Bがありますが、Option Aを開くと「Set up API credentials」のリンクがあるのでクリックすると、次のページにView API Signatureというリンクがあります。
View API Signatureを開くと、下記のページがあります。
ここのAPI username、API password、Signatureをメモします。
まずはCS-CARTのアドオンの画面で、「PayPal決済」と「ペイパルウェブペイメントプラス(クレジットカード)」を有効にしました。
ただし、結果としてはこのアドオンでは「PayPal決済」と「ペイパルウェブペイメントプラス(クレジットカード)」を有効にしたまま放置し、一般設定>支払方法と進み、クレジットカードという名称で下記のエクスプレスチェックアウトの設定をしました。
上記のCS-CARTの画面に、ペイパルで取得したAPI username、API password、Signatureを記入して保存します。
さで、購入決済のテストをしようとしたら、まだ商品が1つも登録されていませんでした。
そこで知人にダミーで商品を登録してもらい、購入してみることにしました。
ECサイトのダミー商品をカートに入れて、手続きをすると、決済でまずは下記のエクスプレスチェックアウトの画面が表示されます。
ペイパルのアカウントを持っていない購入者を想定して、「Pay with Debit or Credit Card」をクリックすると、下記の画面が出ます。
次に、中国人ユーザーを想定して、国をUnited Statesから中国に変更します。
銀聯カードのマークも表示されました。
実際は購入完了までテストしなければなりませんが、今日はここまでにしました。
このECサイトはまだショップの基本情報の登録が未完了で、運用上、多言語多通貨でいくのか多言語1通貨(ドル建てか、香港ドル建てか、中国元建てか等)いくのかとか、商品もまだ登録が完了していませんが、基礎的なテクニカルなサイトの設定は済みました。
AWSの設定のところはエンジニアの助けを受けましたが、なんとかここまで終わりました。
あとは、ショップ情報や商品を登録してもらい、頑張って売ってくれたらと思う次第です。