土屋耕一さんの自然体コピー。春は3日に1度、雨が降ります。

(FC2で表記の年月日に書いた記事を少し改定、コメント追加しています。)
先日、あるクライアントに「他の制作会社で何度デザインをやりなおしてもしっくりこない」Webページの相談を受けました。
そのページは、メインサイトから独立したコーナーで、そのトップページとなります。特にデザイン性の高いページではなく、アクセスユーザーを目的別のコンテンツに誘導することが役割といえます。

さて、このページのユーザビリティを改善するために、その制作会社も当然頑張ったと思います。しかしどうもOKがとれない。初めのうちは言われるままに修正を繰り返したのだと思います。それでも「なんか違和感が」「なんかわかりづらい」「なんかバランスが・・」とやり直しや試行錯誤をするうちに、ある意味ドツボにはまってしまっていったようです。

このサイトは大量のコンテンツを抱え、その更新管理もすべてその制作会社のため、いっそ発注先を代えてしまうか!というわけにもいかないようで・・。
そんなわけで、私の出す提案が通ったとしても競合制作会社からサイトを奪える可能性もなく、せいぜい「貸し」をつくるだけ。競合他社よりウチのほうが優れていることをアピールするチャンス・・なんてまったく思っていません(笑)。悪くするとその泥沼のような案件に、私もハマってしまう危険(?)もあります。

とりあえず、いま画面設計案を作成していますが、こういうドツボというかハマるコトって時々(数年に1回ぐらい)あるんですよね。
こねくり回しておかしくなったあげく、結局着地できないコンセプトを追いかけていたり・・。
昔、著名なコピーライターのひとりである土屋耕一さんが、自著で書かれていたことを思い出しました。

かなりうろ覚えですが、その内容を要約すると・・・

春先のレインコートの広告で、コピーを何度書き直させてもクライアントのOKが出ず、困り果てた広告代理店の営業が土屋さんに助けを求めてきた。土屋さんは他のライターが手がけた件名を引き継ぎたくなかったが拝み倒されてやるはめになった。広告案を見ると、レインコートを雨の日以外でもお洒落に着こなすといった趣旨のコピー案が書かれていた。
土屋さんは思案して1案だけコピーを作った。

春は3日に1度、雨が降ります。
*どうやら「春は3日に1日」を、「3日に1度」が正しそうです。修正しました。

いうまでもなく、「春に三日の晴れなし」ということわざからもってきたコピー案で、結果、そのまま広告になったそうです。
さんざんこねくり回したあげく、うまく着地できないのなら、そのレトリックごと捨てるという勇気も必要ですね。

私もそんなホワイトナイトのような、かっこいい結果が迎えられるといいのですが・・・。

追記
土屋先生は、2009年3月27日、肝細胞がんによりお亡くなりになりました。
ご冥福をお祈りいたします。(満78歳没)。

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