今日、仕事で某キリスト教系の大学図書館に伺っていました。
壁には“図書館の自由に関する宣言”と謳ったポスターが貼ってありました。
覚えきれないので(社)日本図書館協会のホームページで再確認しましたがww。
図書館は、基本的人権のひとつとして知る自由をもつ国民に、資料と施設を提供することをもっとも重要な任務とする。
第1 図書館は資料収集の自由を有する
第2 図書館は資料提供の自由を有する
第3 図書館は利用者の秘密を守る
第4 図書館はすべての検閲に反対する
図書館の自由が侵されるとき、われわれは団結して、あくまで自由を守る。
まあ、こんな宣言だったのですが。
そこで、打ち合わせも済んだ頃、図書館の役員に質問。
「ボーズラブの本もあるんですか?」
「ありますよ、結構」
「そうですか・・大阪の堺市の図書館でちょっと揉めましたよね」
「基本的に18禁なら18歳未満には貸すべきではないだろうし、年齢制限のない本なら貸せばいい。ただあれは単純にルールの問題でしょう」
「いろいろ住民の声とか有識者とか、そういう要望で二転三転したようですよ」
「それがいけない。図書館は誰にも指図されない自由な意思が保障されるべきだから・・・この(キリスト教の)大学にはキリスト教の教えに反する本だって沢山あるし」
なるほど。
堺市の図書館は、なにがマズかったんだろうと、京都新聞の記事を参照しながら考えた。
ボーイズラブは18禁ではなかった。しかし市民の声を受けて貸し出しを制限。
↓
そして反対に「特定の本を排除するのは問題」と非難が集中し、あっさり制限を撤回。
↓
そして、「子どもが見るのにふさわしくない」との声が利用者から出たため、今度は18歳未満への貸し出しを禁止。
↓
そしたら住民グループが「特定の本を排除したり廃棄したりするのは、図書館ではあってはならない。政治的圧力もある」と反発され、18歳未満への貸し出しも認めた。
堺市の図書館は知る自由をもつ国民に資料提供の自由を、(外部からの意見で安易に)制限してしまったわけですが、率直な感想を言うと、図書館たる威厳も尊厳も崇高な意思も感じられません。
図書館というより、単純に堺市の公務員の職場って感じです。
そうしないために、図書館という組織は、“図書館の自由に関する宣言”にあるように、知る自由をもつ国民に、資料と施設を提供することを重要任務とし、資料収集の自由、資料提供の自由、利用者の秘密保持、検閲反対といった考えを理解した人たちによって運営してほしいところです。
紀伊国屋書店に図書館業務を委託する某大学とか、カルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社(TSUTAYA)に委託する自治体などは、図書館の何たるかを理解していないように思います。
以下は京都新聞の2008年12月23日(火)の記事からの引用。
「ボーイズラブ(BL)」と呼ばれる男性同士の恋愛をテーマにした小説に、堺市の図書館が揺れている。市民の声を受けて貸し出しを制限したところ、反対に「特定の本を排除するのは問題」と非難が集中し、制限を撤回。「また突然、対応を変えるかも」と市民の不信感は募っている。
一般的にBL小説は、1冊に数ページのイラストがある。堺市立の7つの図書館が所蔵する計約5500冊のうち、100冊程度には男性同士が裸で絡み合うような過激な描写があった。盗難も多いため、申請があれば貸し出す閉架書庫に置いていた。
しかし、ひっきりなしに貸し出されるため、4つの図書館では誰でも閲覧できる棚に配置。7月、「子どもが見るのにふさわしくない」との声が利用者から出た。
図書館側は、閉架書庫に戻した上で、18歳未満への貸し出し禁止を決定。これに、住民グループが「特定の本を排除したり廃棄したりするのは、図書館ではあってはならない。政治的圧力もある」と反発。有識者も賛同し、11月に廃棄差し止めの住民監査請求が申し立てられると、図書館側は一転、18歳未満への貸し出しも認めた。
堺市は「拙速で、判断を誤った」としている。(共同通信)