『タイタンの妖女』翻訳家・浅倉久志氏、2010年2月14日死去。


訃報はJ-CASTニュースで知りました。

『タイタンの妖女』翻訳家、浅倉久志氏死去。
SF小説の翻訳家で知られる浅倉久志氏が2010年2月14日、心不全で死去していたことがわかった。79歳だった。浅倉氏はカート・ヴォネガット『タイタンの妖女』や、フィリップ・K・ディック『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』などの翻訳者として知られる。

小説『タイタンの妖女』の翻訳で、1つ忘れられない言葉があります。
その翻訳家として浅倉久志氏の名前を知りました。

I’m here.
(私はここにいます)
I’m glad you’re there.
(あなたがそこにいてよかった)

この言葉については2006年12月にYahoo!ブログで書きました。
その記事を少し書きなおしてUPします。

前述の言葉は小説「タイタンの妖女」(カート・ヴォネガット・ジュニア作/早川書房)にでてくる言葉で、水星の地下に棲むという生物「ハーモニウム」ができる、たった2つの会話です。

「ハーモニウム」は振動を養分にして生きています。それは星の振動だったり、人間の鼓動だったり音楽だったりなのですが、小説からハーモニウムの説明を抜粋すると・・・

性は1つしかない。(中略)
彼らは成熟に達したのち、いわば水星がその歌をつづけるかぎり、若さを保ちつづける。
1つの生物が他の生物を傷つける手段はまったくないし、また傷つける動機もない。
飢え、妬み、野心、不安、怒り、宗教、性欲-これらは無縁のものであり、知られてもいない。
(中略)
彼らは弱いテレパシー能力を持っている。彼らが送信し受信できるメッセージは、水星の歌に近いほど単純だ。彼らはおそらく二つのメッセージしか持っていない。最初のメッセージは、第二のそれに対する自動的応答で、第二のそれは最初のそれに対する自動的応答である。
最初のそれは、「ボクハココニイル、ココニイル、ココニイル」
第二のそれは、「キミガソコニイテヨカッタ、ヨカッタ、ヨカッタ」

とあります。
争いや傷つけることを知らない、音(振動)を食べて生きる、たった2つの会話しか持たない美しい生物。
そのたった2つの会話がなんて平和で、こんなに素敵だなんて・・と思ったものです。

「ステキナコトバニデアエテ、ヨカッタ、ヨカッタ、ヨカッタ」
この言葉を使わせていただいた2006年のXmasメッセージを捧げます。

そもそもこの言葉を知ったのは「セント・ギガ」という衛星ラジオの資料からでした。

1991年に生まれ、2000年に終了してしまった「セント・ギガ」という音楽中心の衛星ラジオ(世界初の衛星放送によるデジタルラジオ放送局)が、このハーモニウムの会話をコンセプトとしていました。
また、このラジオ局はタイムテーブルではなく、潮の満ち引き、月の満ち欠けをもとにした「タイドテーブル(潮見表)」で番組が編成されていました。
その、セント・ギガのメッセージは・・・

ハーモニウム・・それは生命の懐かしいかたち。
ハーモニウム・・それは傷つけることも、傷つくことも知らない。
ハーモニウム・・それは不安や怒り、野心や老いることも知らない。
ハーモニウム・・星に住む微かな生命、それは、たった二つの言葉しか知らない。
「私はここにいます」「あなたがそこにいてよかった」
わたしたちの青い星、地球。
セント・ギガは、美しい地球の歌に耳を澄まし、さまざまな生命に、海に、草花や水に、そしてあなたのなかにも眠るハーモニウムに語りかけます。
「私はここにいます」「あなたがそこにいてよかった」

そして財政難で惜しまれつつ終了した最後の放送メッセージもまた、

I’m here.
I’m glad you’re there.
We are St. GIGA

だったそうです。

(2010.05.24追記)
昨日(5/23、日曜)『情熱大陸600回記念シリーズ』第二弾(毎日放送制作/東京地方ではTBSで放送)を見ました。
カメラが追ったのは爆笑問題の太田光氏。番組の中で大田氏が「タイタンの妖女」を「人に勧めたい本13冊」の1冊にとりあげていたのを見て、ちょっと嬉しくなりました。

ググると・・Wikipediaで

爆笑問題の所属事務所である「タイタン」は、太田光がヴォネガットを尊敬していることから、代表作である当作品より名づけられた。

知らなかったです。

日本語訳2009年版に太田が解説を寄せている。

それも知らなかったです。
私もおすすめのSF小説(1冊)です。


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