幼児教育業界の一部ではあるでしょうが、例えば「当社の幼児教育メソッドならIQ(知能指数)が百数十以上になります」といったIQの数値UPを売りにする会社やフランチャイズの教室などが複数あります。
しかも料金(月謝)設定は結構高めの割には、IQという単語に惹かれる親も少なくないようで、一定の幼児をもつ親の人気も受けているようです。
しかし、成人ではありえないような数値もよく出てしまうような、正確性に乏しい幼児のIQです。
そんな曖昧な幼児のIQにもかかわらず、それを重要な指針として、140以上にするとか、150にするとか、IQを高くすることを売りにしている幼児教室が広がっているのには、やはり少子化を背景に、幼児教育への親のニーズが強いからなのでしょう。
幼児でも英会話の教室なら、少ししゃべれるようになったとか、ピアノ教室なら、課題曲が弾けるようになったとか、教室の通わせる親からすれば子供の成果が客観的にわかります。
しかし、知能(指数)が高まるというか、そういった客観的な成長の度合いや成果が測りづらい教育だから、IQテストが引き合いに出されたのでしょう。
もちろん、考えるチカラを育てるんですよ、地アタマを良くするんですよ、みたいな教育メソッドを否定するつもりはありません。
しかしその成果が、なにができるようになったとか、うまくなったといったものと違って、具体的に見えない「不透明さ」や、幼児へのIQテストの「曖昧さ」、さらにIQテスト慣れ(対策)をしてしまうと上がってしまう「不正確さ」をいいことに、IQ値のUPを過度に強調して集客広告に使う業者に強く違和感を感じます。
わが子の「考えるチカラ」を伸ばしたいとか「地アタマ」を良くしたい、というキモチで、かつIQというものがどういうものか一定の理解をしている親なら、逆にIQが大幅にUPすると謳う教室に対して、グレーな商法臭さとか、IQ至上主義的な宗教臭さとか、そんな違和感は感じないのでしょうか?
もし、教室がそのメソッドをきちんと説明できなかったり、教祖というか、カリスマ性を持った先生の教育法で疑問も持たせない法人もあるようです。
Wikipediaで「知能指数」を見ると、こんな1行が目につきました。
「教育によって知能がかなり上昇する」という説は、教育の重要さを示す反面、業者の宣伝文句となって過度の早期教育をあおる危険性もある。
「そろばん習わせたら計算力がつくだけでなく、集中力がつくし、脳が刺激されていいですよ」なら、副産物的な効果も期待できるかもと納得します。
「IQ教育ではなく、この教室のメソッドが素晴らしいので通わせています」、なら、ああそうですかとも思います。
しかし、IQが飛躍的に伸びるという宣伝文句を妄信するIQ信者の親がいたとしたら、おめでたすぎると思います。
さて、そんなIQを伸ばす幼児教室も、地方に細かく分散して教室を開くという展開は、他の一般的な教室と同じかと思いますし、各地で先生(オーナー)を教育し、開業のサポートや生徒集めなどのフォローを本部が教室に展開するフランチャイズ方式もよくあるパターンです。
しかし、このフランチャイズにも、IQを伸ばす幼児教室では「闇」がありそうです。
例えば同じ教育業界の公文式の場合はフランチャイズの教室を「くもんの先生」と呼んでいて、経営のフォローから教材育メソッド、生徒の募集など、多々サポートはしてくれますが、先生だけは派遣してくれません。
ヤマハ音楽教室のフランチャイズ(楽器店)も、同じく先生は派遣しません。
ところが一部の(さきほど書いた)IQ教育のフランチャイズ展開は「投資型」とも表現して募集をかけていたりします。
確かに、くもんの先生だろうが学習塾だろうが、ボランティアでない限り利潤を求めるのは当然です。
しかしなぜわざわざ「投資型」というかというと、本部から講師まで派遣してくれるから、教室を開くイニシャルコストと募集の費用の一部、つまり出資すればいいというところからきているのだと思います。
教室を開くのに、先生は要らない?
普通なら、先生を本部が自社の教材や教育方式を指導し、フォローしながら開業してもらうパターンかと思います。
講師まで出しておいて、運営も募集も不動産の物件手配も内装業者の手配も本部がやって、フランチャイジー(加盟者)には金だけ出させる図式なら、金融機関に融資してもらって直営店でやればいいのではないでしょうか。
金融機関が融資してくれない事情があるとか、または金融機関に頼らず資金調達をするのが目的なら、教室のフランチャイズ展開というより、出資者募集です。
だったらまだ純粋に「出資者」のほうがマシです。
そんな投資型のフランチャイズ契約はリスクが高いと思います。
なぜなら投資家であれば経営責任はありませんし、儲からなければ文句も言えます。
しかし、講師派遣から運営、募集も本部任せのフランチャイジーなら、努力しようにもする要素(領域)も少ないでしょう。
それに、黒字になるまで経営を本部が代行してくれるという謳い文句を見ましたが、その間の赤字を保証してくれているわけではありません。
本部からすれば経営を代行して、延々と赤字が続いてもその赤字はオーナーが負担してくれるし、オーナーが閉店を判断しても、(本部は)儲かる教室だけ生き残ってくれればいいわけです。
そういう意味では、IQ教育などという不透明で曖昧な幼児教室で、しかも投資型などというわけのわからないフランチャイズに手を出すほうも注意が必要な気がします。